『Because…』(若主瑛SS)~第6章~
引き続き二次創作となります。 苦手な方はご遠慮ください。 「おや、佐伯君。君がここに来るのはめずらしいですね。何か御用ですか?」 「・・・はい、化学の

ASHURAさんのブログ記事

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『Because…』(若主瑛SS)~第6章~

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引き続き二次創作となります。
苦手な方はご遠慮ください。










「おや、佐伯君。君がここに来るのはめずらしいですね。何か御用ですか?」

「・・・はい、化学の教科担当の人が欠席だったので、今日提出期限だった課題を集めてきました」

「やや、それはご苦労様です。すみませんがこちらにお願い出来ますか?」



化学準備室の一角には、他クラスで集められただろう化学の課題が積まれていた。
その脇に静かに自分のクラスの分を置いて、足早に退室しようとした時。
掛けられた若王子先生の声に体が固まった。





「この間の事は、申し訳ありませんが他言無用でお願いします。ばれちゃうと僕、校長先生に怒られそうなんで」




その言葉は、いたずらをした子供が、大人に叱られるのを避ける為のような、そんな無邪気さが少しだけ隠れていた。


軽い―――。
そう感じて胸が詰まる。


自分の生徒と個人的に2人で出かける事が、『教師』の立場として問題になる事くらい俺にも判る。
そんな危険を冒してまであいつと2人で遊びに行った若王子先生の気持ちが、俺にはよくわからなかった。




「先生は・・・、若王子先生は、あいつの事、どう思ってるんですか・・・?」



気が付いたら俺は、無意識のうちにそんな言葉を投げかけていた。
我ながら子供じみた、お決まりな言葉を発してしまったと、少しだけ恥ずかしくなった。


先生の顔を見る事が出来ない。弱いな、俺―――。

でもどうしても知りたかった。聞かずにはいられなかった。

勝手な事をするなと、あいつには怒れるかもしれないけど…。


あの日の自分の決断が間違っていなかったと。
遠回しでもなんでもいいから、誰かに言って欲しかったのかもしれない。


恋心を隠し、友達という、一番近くて、安定して、一番ずるい場所を選んだ。
それが間違いじゃなかったという証明が欲しかったのかもしれない。





だから…言って欲しかったんだ。
若王子先生に。



あいつの事が好きだ、と―――。






なのに、現実は…、大人は、残酷だ。




「…僕は君たちの先生です。そして君たちは、僕のかわいい生徒だ。それ以上でも、以下でもない。…この間の事は、彼女が何かで落ち込んでいた様ですから、励ましのつもりで誘っただけにすぎません」




無情に突き刺さる言葉の数々。
先生は淡々と言葉を紡ぎ、俺には冷たく投げかけてくる。




心が、痛い…。
無性に泣きたくなる、そんな衝動と同時に込み上げてくる怒り。




確かに正論だった。
それが当たり前でなくてはならない立場だ。判っている。



けれどだからこそ、先生のその行為は、唯単に事務的なだけの…、




あいつへの『同情』だ――。







「失礼します」






背後から突如聞こえたその声に俺は体を強張らせた。



声の主は、顔を見なくても判る。
聞きなれたあいつの声だった。




「お、お前…」

「佐伯君、どうしたの?」

「え…、あ、いや…」



今の話を聞かれたかと思うと、心臓が落ち着きを取り戻せない。

一人冷や汗をかいている中、自分のクラス分の課題を集めてきたあいつが化学準備室へ入室してきた。




「先生、私のクラスの分集めてきました。ここに置いておきますね」



平然としているあいつを見て、俺は少しだけ胸を撫で下ろした。



(よかった…、聞こえてなかったみたいだな)



もし聞こえていたらと思うと、ぞっとする。
こんな話、こいつに聞かせられない。
先生に本気の恋をしているのに、相手から向けられている想いが『同情』だなんて…、聞かせられない。




「じゃぁ、失礼しました」
「はい、気をつけて帰ってくださいね」







その時。
他愛の無い先生からの言葉を受けたあいつの肩が、小刻みに震えだしたのを、俺は気付いてしまった。






「おいっ…!!」





俺の呼びかけにも答えず、自分の顔を見せないように閉じられた扉。
扉の向こうから、走り去る足音が聞こえた。




やっぱり、聞こえてたんだ。


一番聞いてほしくない事を。


一番聞き無くないであろう事を…。




「っっ…!!」

「佐伯君」





追いかけようとして外へ出ようとしたその時、若王子先生に声を掛けられる。



邪魔するなと、本気で苛立った俺に、その言葉は続いた。







「僕は…、君がうらやましいですよ…」







消え入りそうなその言葉が、やけに哀しく響く。

俺は居た堪れない気持ちを押し殺し、走り去ったあいつの後を追った。








To be continude…。
  • │2010-08-02 20:20:18│ カテゴリー:日記│ コメント(4)
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